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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1564 DVD情報『ゴールド・ディガース』(1933)
 先のMGM映画の人気シリーズが《ブロードウェイ・メロディ》シリーズならば、こちらワーナー・ブラザーズ映画は《ゴールド・ディガーズ》シリーズであります。お話は貧乏なコーラスガールがお金持ちのおじさまを手玉に取るという至って単純なもの。見るべきはバスビー・バークレイ舞踊監督による素晴らしいレヴュー・シーンの数々であります。私のミュージカル映画の師匠であり、『ミュージカル映画事典』(平凡社2016)の著者でおられる重木昭信氏によるバークレイ監督の特徴をその名著からご紹介しましょう。
 「バークレイは映画でしか出来ない独創性の高いミュージカル場面を作り出しました。大勢のコーラスガールたちを幾何学的に並べて真上から撮影する手法は、万華鏡的(カレイドスコープ)と呼ばれ、俯瞰撮影(オーバー・ショットまたはトップ・ショットと呼ばれる)は彼のトレードマークとなりました」。

 1933年当時のミュージカル映画はいささか作品の構成やバランスが悪いのが難点であります。バークレイ監督のレヴュー・シーンは全部で4つです。他にディック・パウエルがピアノを弾きながら歌う“I've Got to Sing a Torch Song”がありますが、それでも90分で5曲は少ないですね。

“We're in the Money”
 華やかなオープニング・タイトルに続いて体中にコインを巻きつけた衣裳のジンジャー・ロジャースが歌いながら登場。他のコーラスガールたちがちょい役なのにジンジャーだけは顔のアップから、唇のアップから、歯並びから、ベロまで見える物凄いアップという特別扱いで場面をさらいます。カメラの急な寄りで一瞬ピントがボケますがバークレイ監督はそんな事無視してワンショットで撮りつづけます。せっかくのレヴューが始まったあたりで残念ながらダンスは中断します。後年、ブロードウェイの舞台ミュージカル『42ND STREET』において“gold diggers of 1933 We're in the Money”ナンバーは豪華なタップ・ダンス・ナンバーとして生まれ変わりました。

“Pettin in the Park”
 Y'sの皆さんに絶対お見せしたい位馬鹿馬鹿しくて楽しすぎる8分に渡るレヴュー・ナンバー。ディック・パウエルとルビー・キーラーの歌からキーラーのタップ・ダンスへのスマートな流れ、その先はもう説明不可能であります。
 バークレイ監督半端ない!

“The Shadow Walts”
 ヴァイオリンを持ったコーラスガールたちが繰り広げる華やかな6分間のレヴュー・ナンバーです。
 1986年の宝塚歌劇花組公演『メモアール・ド・パリ』で演出の小原弘稔氏がバークレイ監督のこのレヴュー・ナンバーを宝塚向けに再構成して舞台にあげたのは素晴らしかった。曲は変えてましたが、衣裳や装置が全く同じで素敵でした。

“Remember My Forgotten Man”
 ジョーン・ブロンデルが歌う反戦をテーマにしたドラマティックなナンバーです。ダンスでもレヴューでもないのに偉く説得力、あるナンバーでした。
 私はこのコラムを書くのにジュネス企画からだいぶ前に発売された『ゴールド・ディガーズ』のビデオを引っ張り出してきて観たのですがビデオの字幕では、Forgotten Manを《忘れられた男》ではなく《骨抜き男》と訳していました。
 重木昭信氏も著書の中で同じ指摘をされてましたが、何なんでしょうね?これ。

 映画って《いつ・どこで・だれと》の部分が大きくて作品の評価がその事で左右されたりもします。私は何と浪人中の18歳の春に四ッ谷公会堂でこの『ゴールド・ディガーズ』をフレッド・アステア主演の『セカンド・コーラス』と二本立てで観ました。ミュージカル愛好会の方々主催の16oフィルムによる上映会で、当然の事ながら字幕無しでした。ぴあの自主上映コーナーに掲載された情報で入場料は¥500位でした。場内は満席でした。
 さてトラブルはお待ちかねのレヴュー“Pettin in the Park”ナンバーの始まり、画面の緞帳が上がり出した時でした。そう、フィルムが止まってしまったのです。場内が真っ暗になり、数分が経過しました。「何巻目から上映し直します!」と主催者からアナウンスがあり上映が再開しました。しかし同じ場所でまた止まってしまい、2、3回そのトラブルが繰り返された後で「映写機の知識のあるかたいらっしゃいませんか?」と主催者から声が上がり数名が飛んで行きました。携帯も何にも無い時代に私達はどうしていたのでしょうか?やがて上映が再開され無事にTHE ENDを迎えました。
 後日ミュージカル・ファンの方に聞いたところ、四ッ谷公会堂の映写機と輸入物の16oフィルムとの相性が悪く、どうにもこうにも動かないので、フィルムに潤滑油をつけながら映写したそうです。高価なフィルムを私達観客の為にダメにしてしまったわけですが、この愛好会に協力して大切な16oフィルムを提供されていたのが何と重木昭信氏だったそうです。

 『踊る不夜城』『ゴールド・ディガーズ』は共に3月にジュネス企画から発売されます。

天野 俊哉



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