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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1371 ミュージカル映画DVDBOX第2弾(その1)
 書店で買えるコズミック出版のDVD BOXミュージカル映画シリーズ第2弾が発売されました。
 発売前から今回のタイトルが《ミュージカル・パーフェクトコレクション/ブロードウェイ》と聞いていたので、てっきりブロードウェイ・ミュージカルの特集かと思いきや、  ミッキー・ルーニー主演のMGM映画『ブロードウェイ』(1941)が含まれているから、なんですね。
 前回の同シリーズ『雨に唄えば』を購入して全10作品を再見しましたが、日本語字幕入りで観たせいか楽しさ倍増でした。また、以前はカラー画面に問題の多かったコズミック出版DVDなのに、ここ10年ですっかり鮮明になり、不満もありませんでした。

 まずは、ハリウッド・ミュージカル映画の黄金時代である1930年代の戦前の作品を取り上げましょう。まあ実に渋いところが並びました。

★『踊るアメリカ艦隊』
(1936・MGM映画)

 タップの女王エレノア・パウエルが主演し、コール・ポーターが音楽を提供したMGMミュージカル大作。
 ニューヨークに上陸した3人の水平の恋物語という『錨を上げて』や『踊る大紐育』等、その後何度も繰り返される事になるお馴染みのストーリー。アメリカを代表する名優になるジェームズ・スチュアートの初期の主演作品でもあります。
 コール・ポーターは“Easy to Love”“I've Got You Under My Skin”という2つの名曲を残しました。夜のセントラルパークでジェームズ・スチュアートによって歌われる“Easy to Love”は、当初吹き替えを予定してましたが、あまりにも曲が素晴らしいので「誰が歌っても問題なかろう!」と、結局は地声で録音されたそうです。ほんの少しだけ絡むエレノア・パウエルの方は吹き替えているのですから不思議ですよね。
 さて、昔の俳優の凄いところはミュージカル映画に出演した以上は当たり前の様に踊ってしまう事です。
 ちなみに、カップルになる主演6人の本業は
ジェームズ・スチュアート(俳優)
エレノア・パウエル(タップダンサー)
バディ・エブセン(タップダンサー)
フランセス・ラングフォード(歌手)
シド・シルヴァーズ(コメディアン・脚本家・作詞家として知られており、この作品の原作者でもあります)

 そして、
ユナ・マーケル(俳優)
となります。
 そこら辺をおさえて観ると、この3ペアが登場するタップ・ナンバー“Hey Babe Hey!”をより楽しめますよ。
 多分190pはあろうスチュアートと共にでかいタップダンサーのバディ・エブセンのエキセントリックなスタイルのタップダンスも笑えます。エブセンは、この30年後にテレビの人気シリーズ『じゃじゃ馬億万長者』に主演し、スチュアート以上の有名人になりました。
 映画の長さに比べてミュージカル・ナンバーが少ないのが欠点であり、パウエルのタップダンスも映画の前半にナイトクラブでの“Rap Tap on Wood”と“Hey Babe Hey!”があるだけ。MGMはドラマの部分でスチュアートに絡むヴァージニア・ブルースに力を入れ過ぎた感じです。
 それでも、パウエル、エブセン、ラングフォードらミュージカル・キャスト100名以上による映画のラストを飾る15分のプロダクション・ナンバー“Swingin the Jinx Away”はお見事です。

★『陽気な街』
(1937・FOX映画)

 ミュージカル映画が後世に名を残すか?残さないか?のひとつに音楽があります。記憶に残らないミュージカル映画には記憶に残るメロディが無いのです。
 私が40年も前に初めてこの映画のミュージカル・ナンバーをテレビで観た時、心地好いスマートなメロディが耳に残りました。アメリカのシューベルトと呼ばれたアーヴィング・バーリンが音楽を提供しました。

 FOXは主演コンビによその映画会社から歌手のディック・パウエルとドラマの女優マデリン・キャロルを借りてきました。ワーナー映画でマンネリ気味だったパウエルにヒッチコック映画のヒロインで知られるキャロルなんてナイスなアイデアです。そしてFOX映画専属の歌手アリス・フェイとお笑いのリッツ・ブラザーズを助演させました。このキャスティングは4者のキャリアにプラスに働いたようです。
 とは言え、ミュージカル・ナンバーは少なく、派手なダンスも2つしかありません。どちらもアリス・フェイとリッツ・ブラザーズをフューチャーしたものです。
 映画のオープニングでの“He Ain't Got Rhythm”は、学帽を被った女性ダンサーの衣裳がなかなか良いですし、セイモア・フェリックスの振付もユニークです。初めてこのナンバーのリッツ・ブラザーズを見たとき、彼等のスマートな動きにもうビックリしました。
 私はたった一度だけ東京リズムボーイズと3人で踊った事があるのですが、そのナンバーの振付の時に松本晋一さんから「ここは3人がリッツ・ブラザーズみたいに上半身を動かさないで!」と指示を受けたものです。そう、リッツ・ブラザーズの踊りの凄さはタコみたいに動く下半身にあるのかも知れません。舞台袖に引っ込んで行く時の表情も笑えます。
 そしてもうひとつが“Sluming on Park Avenue”という上流階級を馬鹿にしたナンバー。前半はアリス・フェイが歌い街の野郎共とタップダンスを。後半はアリス・フェイと同じ衣裳を着たハリー・リッツとリッツ・ブラザーズの歌と踊り。裸足に燕尾服の彼等のシムシャム・ステップが可笑しい。
 気楽に楽しめるミュージカル映画。

★『オズの魔法使い』
(1939・MGM映画)

 ミュージカル映画史上の名作ではありますが、タップダンス・ナンバーが無いので今まで取り上げた事がありませんでした。
 案山子役のレイ・ボルジャーも当初ブリキ男の役を演じる予定だったバディ・エブセンも一流のタップダンサーなのに勿体無い。
 ハリウッド映画を語るうえで1939年という年は記念すべき年であります。『風と共に去りぬ』もこの『オズの魔法使い』も1939年に公開されたからです。また、監督が何回も変わったりの製作エピソードも多くて話題に事欠かない作品であります。
 私達が出演してきた『東京リズム劇場』では、『オズの魔法使い』のパロディの『伊豆の魔法使い』をタップ名作劇場でやりました。そちらはタップダンス・ナンバーやショー・ナンバー満載でしたのでタイムマシンがあれば皆さまにお見せ出来るのに残念です。
 今、このコラムをひばりが丘駅構内のカフェで打っているのですが、お店のBGMが何と『オズの魔法使い』の主題歌で、ジュディ・ガーランドの代表曲となった“Over the Rainbow”です。素敵なメロディですね。
 つづく。

天野 俊哉



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